訪問看護って何をするの?
私たちが「遊び」を大切にする理由
実は、この記事はもっと早く書けばよかったと思っています。
訪問看護についてお話しすると、
「訪問看護って何をするんですか?」
と聞かれることが本当によくあります。
そのたびにお伝えしていたのですが、ブログではまだきちんとお話しできていませんでした。
「遊びを通して関係性つくりなど進めていきます。」
そうお伝えすると、
「遊ぶことも訪問看護なんですか?」
と驚かれることも少なくありません。
もちろん、目的は遊ぶことではありません。
子どもが安心して過ごせる関係を築き、その子らしさを理解し、一人ひとりに合った看護につなげていくこと。
そのための大切な方法の一つが「遊び」です。
今回は、私たちが訪問看護で遊びを大切にしている理由についてお伝えしたいと思います。
この記事を読んで、「なるほど、そんな意味があったんだ」と思っていただけたら嬉しいです。
子どもにとって遊びは「育つこと」そのもの
大人にとって遊びは、仕事や家事を終えた後の息抜きや、ご褒美のような時間ではないでしょうか。
でも、子どもにとって遊びは少し意味が違います。
遊びは、子どもの発達を支える大切な活動です。
身体を動かし、
「どうしたらできるかな?」と考え、
人と関わり、
成功や失敗を経験し、
嬉しさや悔しさを味わう。
そんな経験を積み重ねながら、心も身体も少しずつ育っていきます。
つまり子どもは、遊びながら学び、遊びながら成長しています。
だからこそ、この時間は単なる暇つぶしでも、ご褒美でもありません。
子どもの育ちに欠かせない、大切な時間なのです。
遊びの中で育つ「非認知能力」
遊びの中では、
・好奇心
・挑戦する力
・集中力
・最後まで取り組む力
・感情を調整する力
・思いやり
・人と協力する力
など、さまざまな力が育まれていきます。
これらは「非認知能力」と呼ばれ、テストでは測ることのできない、生きていくための土台となる力です。
学力だけでなく、人との関わりや困難を乗り越える力にもつながることが分かっており、子どもの成長に欠かせない要素の一つと考えられています。
信頼関係を築く、一番自然なコミュニケーション
子どもは、とても素直です。
安心できる相手には自然と心を開きますが、不安や緊張を感じる相手には、本当の気持ちを見せることが難しくなります。
そのため、初めて会った大人から、
「頑張ろう。」
「やってみよう。」
と言われても、なかなか心は動きません。
だからこそ、まず大切にしているのは、安心できる関係を築くことです。
ゲームをしたり、お絵描きをしたり、公園で身体を動かしたり。
子どもが夢中になれる時間を一緒に過ごすことで、少しずつ距離が縮まり、
「この人と一緒なら安心できる。」
そんな気持ちが育っていきます。
遊びは、子どもとの信頼関係を築くための最も自然なコミュニケーションであり、その子の心に近づくための入り口だと考えています。
信頼関係が築かれて初めて、本当の困りごとや、その子らしさが見えてきます。
夢中になっている時間は、大切なアセスメントの時間
一緒に過ごす時間は、楽しむだけの時間ではありません。
看護師にとっては、その子を理解するための大切なアセスメントの時間でもあります。
例えば、
・どんなことに興味があるのか
・身体の使い方や姿勢はどうか
・感覚の特徴はあるか
・困った時にどのように気持ちを表現するのか
・人との関わり方はどうか
・疲れやすさや集中できる時間はどれくらいか
・どんな時に笑顔になり、どんな時に緊張するのか
夢中になっている時ほど、その子本来の姿が自然と表れます。
診察室や面談だけでは見えにくい姿も、一緒に過ごす時間の中だからこそ見えてくることがあります。
その様子を丁寧に観察し、「その子らしさ」を理解することが、その後の看護やご家族への支援、学校や関係機関との連携につな
がっていきます。
遊びは、楽しむ時間であると同時に、一人ひとりに合った看護を考えるための大切な時間でもあるのです。
「頑張る」より、「やってみたい」が育つ環境を
「遊びの中で、本当に成長できるの?」
そう思われる方もいるかもしれません。
もちろん、必要に応じて練習や課題に取り組むことも大切です。
しかし、発達に困りごとのあるお子さんの中には、「できるようにならなきゃ」「頑張らなきゃ」という思いが大きな負担になってしまうことがあります。
以前のブログでご紹介した「過剰適応」のように、周りの期待に応えようと頑張り続け、自分の気持ちよりも「正しくできること」を優先してしまう子も少なくありません。
例えば、言葉がゆっくり育っているお子さんに、言葉だけを繰り返し練習すると、疲れてしまったり、「やらされている」と感じてしまったりすることがあります。
一方で、大好きな遊びの中では、自然に言葉がでてきます。
「話す練習」を意識していなくても、人と関わりたい気持ちや、自分の思いを伝えたい気持ちが自然と育っていくのです。
大切なのは、「頑張らせること」ではありません。
子ども自身が「やってみたい」と思える環境をつくることです。
安心できる環境の中で、自分から挑戦し、「できた」という経験を積み重ねること。
その積み重ねが、自信や主体性を育み、その子らしい成長につながっていくと考えています。
遊びはゴールではなく、看護の入り口
信頼関係が築かれ、その子らしさが見えてくると、必要な支援も少しずつ見えてきます。
例えば、
・生活リズムを整えるための支援
・身体や姿勢、運動へのアプローチ
・コミュニケーション方法の検討
・ご家族への相談支援
・学校や主治医、相談支援専門員など関係機関との情報共有や連携
訪問看護では、その日に見えた様子だけで判断するのではなく、日々の小さな変化を積み重ねながら、一人ひとりに合った看護を考えていきます。
遊びはゴールではありません。
遊びの中で得られた気づきを看護につなげ、ご家族や関係機関とも共有しながら、その子らしい成長を支えていくことが、私たちの役割です。
最後に
訪問看護をしていると、大きな変化よりも、小さな変化に出会うことの方が多いかもしれません。
昨日までは目を合わせられなかった子が笑ってくれた。
自分から「もう一回やりたい」と伝えてくれた。
「○○さん、これ見て。」と話しかけてくれた。
そんな小さな一歩を、ご家族と一緒に喜べることが、この仕事の大きなやりがいです。
私たちが大切にしているのは、「遊ぶこと」ではありません。
安心できる関係の中で、その子が「やってみたい」と思える環境をつくること。
そして、その子らしさを理解し、一人ひとりに合った看護につなげていくことです。
これからも、一人ひとりのペースを大切にしながら、ご家族や学校、関係機関と一緒に、その子らしい成長を支えていきたいと思っています。